通院しているから大丈夫、ではない――医療と企業の健康管理をつなぐ

「病院に行っている人」と「健康な人」は同じではない
通院していることは、医療につながっていることを意味します。一方、企業が考えるべきなのは、その人が現在どのような健康状態にあり、仕事を安全に継続できる状態なのか、そして将来的な健康リスクをどのように下げるかということです。

この二つは重なる部分もありますが、同じではありません。健診異常者には「受診勧奨」だけで終わらせない。健康診断で異常があった場合、企業では「医療機関を受診してください」と伝えることが一般的です。

もちろん受診勧奨は重要です。しかし、そこで終わってしまうと、本人が医療機関を受診した後に何をすればよいのか分からないことがあります。
例えば、
「薬を飲むべきなのか」
「生活習慣を変えるだけでよいのか」
「追加検査は必要なのか」
「運動してよいのか」
「どの程度の数値なら問題なのか」

などです。企業が治療方針を決めることはできません。しかし、受診する前に正しい情報を得て、医師に適切な質問ができる状態をつくることには意味があります。

「病院に行ってください」ではなく、「何について相談すればよいのか」まで理解してもらう。これが健康教育の重要な役割の一つです。

<一人ひとりに合わせた健康教育>

健康教育は、全社員に同じ内容を伝えるだけでは十分ではありません。例えば、血圧が高い人に必要な情報と、筋力低下が問題になっている人に必要な情報は違います。
また、同じ血圧異常でも、

  • 年齢
  • 体重
  • 運動習慣
  • 食生活
  • 喫煙
  • 飲酒
  • 睡眠
  • 既往歴
  • 現在の治療状況

によって、考えるべきことは変わります。そのため、会社全体への健康教育と個人の健康状態に合わせた健康教育の両方が必要です。全社的な健康文化をつくりながら、リスクの高い人には個別対応を行う。これが企業の健康管理として現実的な形ではないでしょうか。

これからは「健康寿命」だけでなく「就業機能」を考える。高齢化社会で特に重要になるのが、「病気があるかどうか」だけでなく「仕事をするための機能が保たれているか」という視点です。
例えば、

  • 認知機能
  • 筋力
  • 歩行能力
  • 視力
  • 聴力
  • 上肢機能
  • バランス能力

などです。特に業務に直接影響しやすいのは、著しい認知機能低下、著しいサルコペニア、麻痺障害、高次脳機能障害などです。だからこそ、これらにつながるリスクを早い段階から減らすことが重要になります。

<健康診断を「健康管理の入口」にする>

健康診断は重要です。しかし、健康診断だけで働く人の健康状態をすべて把握することはできません。
健康診断を入口として、健診 → リスク評価 → 健康教育 → 必要な受診 → 運動・生活習慣改善 → 再評価という循環をつくる。これからの企業の健康管理は、このような仕組みに変わっていく必要があります。

健康診断を「年に一度のイベント」にするのではなく、一年間の健康管理を始める起点として位置づけることが重要です。
高齢化に伴い対応が必要な従業員が増えていくことからも、十分に対応できる数の産業医、保健師を雇うことも健康経営の投資としては無駄にはならないだろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA